Friday, October 01, 2010

遅ればせながら・・・

ご無沙汰しております、ヨコエビの小川です。

気づいたらもう10月、潮汐のパターンが切り替わり、昼にはあまり引かなくなる季節です。
論文をまとめる時期でもあり、新たな調査はあまり・・・

というわけで、この夏をざっと振り返ることにします。


・No.41 小櫃川河口干潟「24時間」底引網調査(8/16-17)
小櫃川河口といえば、東京湾におけるヨコエビのメッカです。
毎月、干潟面を歩いて定量調査を行っていますが、今回はちょっと違います。



屋形船です。

調査地にアンカーを落としてエンジンを切り、丸一日ぶっ通しで船の上から調査を行います。
すぐ近くには東京湾アクアラインが通っています。

日差しはありますが、吹き抜ける海風が実に爽やかです。



使うのは、目あいが1mmの底引き網。
本来は、ウミグモを研究している鈴木先輩の調査ですが、網にヨコエビが入るので、それをもらうためについて行きました。

1時間に3本の底引き網と、1本のプランクトンネットを曳きます。
作業には30分くらいかかるので、残り30分は休憩・・・
あれ?いつ寝るんだ?

夜間はライトで照らしながら成果物を確認。
採れてる、採れてる・・・




不思議とリズムができるもので、いつの間にやら30分おきに目が覚める癖が。
その場でヨコエビを選別し、クーラーボックスへ入れます。その他のサンプルは、ホルマリンで固定して持ち帰ります。
なぜヨコエビだけ冷やして持ち帰るのかといえば、デリケートなパーツが外れるのを防ぐのと、綺麗な写真が撮れるから、です。

ああ、夜明けだ。
調査開始は15時。昼間は生物の出現パターンがあまり変化しないのと、早く帰りたいのとで、13時で切り上げました。なので、正確には「22時間」調査です。


研究室に戻り、さっそくソーティング。ホルマリンサンプルは、ホルマリンを抜いてから、取り残しのヨコエビを拾います。
今回得られたのは14種群。新顔が5種群も出てきたので、実りある調査でした。

その中から厳選した今回のヨコエビは、アゴナガヨコエビ属の一種Pontogeneia sp. (*1)です。
底生というより、浮遊性に近いヨコエビです。
底引き網に加えて、プランクトンネットで採れました。
大きな複眼と長い触角が目立ちます。
最大の特徴は触角の根元にウロコ状の突起があることですが・・・ちょっと分かりにくいですかね・・・?

種類ごとに、潮汐・日周パタンと出現パタンが同調していないか検討しましたが、1回しか調査していないため、はっきりとした関係は出てきませんでした。
でも、何となくそれらしいリンクが見られた3種群については、卒論に盛り込みたいと思います。


・No.42 小櫃川河口干潟定量調査(8/23-24)
8月分の定量調査です。

1日目は、ヤドカリの調査をお手伝い。
中にはサキグロタマツメタのように大きな貝殻を利用する、ジャンボサイズの個体もいました。
もちろん、ついでに、目に付いたヨコエビをゲット!
この調査の詳細については、地曵君の方から続報が・・・あるといいな・・・


2日目は、ふるいを使ったいつもの調査。

天気は快晴。
胴長なんて履いてられないので、もう水着とTシャツです。
私なんかは、足元はサンダルです(本当はちょっと危険ですが・・・)。

今回も2人の息はバッチリ。
ふるいに残ったものを袋に入れて持ち帰る方法に切り替えたので、ヨコエビの回収率もバッチリ。


というわけで、今回のヨコエビは、ヒメドロソコエビParagrandidierella minimaです。
卵を抱いているので、成熟したメスです。
下に写っているピンセットの先と比較していただければお分かりと思いますが、ちっちゃいです。

下は、先の「24時間」調査で得られたサンプルです。
これはもう少し大きめの個体で、体長3mmほどです。
太めな触角と華奢な脚。何といっても、白地に赤い斑点が並んでいる複眼が特徴です。
砂の中から得られることが多く、小櫃川河口干潟ではよく採れます。

今回の結果は7月とは大きく異なり、前回沖側でピークのあったHaustorioidesが岸側にピークを作り、沖側と岸側とでヒメドロソコエビが急増。全部持ち帰ってから拾うという方法が影響しているのか、1か月で変化したのか・・・予想以上の差が出てしまい、少々困っています。

とにかく9月の調査も「持ち帰ってから拾う」手法で実施、結果を比べてみようと思います。


夏の思い出シリーズ第1弾(8月)は、これにて終了。いかがでしたでしょうか?
第2弾(9月)はまた後日・・・

P.S.
6/28から続いていたドロクダ地獄、終息しました。
Corophiidae(ドロクダムシ科) 1729 (*2)
Jassa sp.(カマキリヨコエビ属) 8  (*3)
Melita sp.(メリタヨコエビ属) 1
という編成でした。
無作為に掴んだ泥の塊から拾ったので、このデータを使って割合を求めてよいはずですが、ドロクダが科までというのがいただけません。早く見分け方を覚えて種構成を出したいものです。
ということは・・・新たな地獄の始まり・・・?


(海洋4年 小川洋)



追記

(*1)
アゴナガヨコエビ Pontogeneia rostrata
世界には複数種が確認されていますが、この種が一番多く記録に登場するようです。
日本でも専ら本種とされています。
ロシアのГурьяноваさんが1951年に書いた有名な論文がありますが、それによるとどうやら盤洲のものもP. rostrataのようです。
参考文献
Гурьяаоонова,Е.Ф. (1951) Бокоплавы морей СССР сопредельных вод (Amphipoda - Gammaridea). Определители по фауне СССР. Т. 41, С. 1-1033.

(*2)
アリアケドロクダムシ Monocorophium acherusicum

(*3)
フトヒゲカマキリヨコエビ Jassa slatteryi 



異動

久々の投稿です。鏡味です。 東邦大学理学部の湖沼生態学研究室は2018年3月をもって解散することとなりました。 研究室が始まったのが2007年、53名の学生が卒業しました。研究室は学生や研究員の方々の研究・サポートなしにはありえませんでした。今まで本当にありがとうございま...