Tuesday, November 30, 2010

秋の思い出(小川ひ)

ヨコエビの小川です。

サンプルの再検討や発表準備など、
足で稼いでいた頃とは色彩の異なる日々が続いています。
あと1か月で下書き提出だもんね。

また、わが師からは「種まで落とさないと意味がない」と厳命を受け、
文献収集も加速してきました。
海が見たい・・・

そんな中で出会ったヨコエビ達を紹介します。



・No.00 ”アメヨコ”

「アメ横」でヨコエビを採ったのではありません。

風呂田さんがオレゴン土産に幾つかヨコエビのサンプルをくれました。
某氏曰く、それこそが本当の「アメヨコ」なのだそうです。
(そんな訳ないだろう・・・)と思いつつ、以下に紹介します。

ドロクダムシ上科Corophioidea ヒガナガヨコエビ科Ampithoidae ヒゲナガヨコエビ属
 ニッポンモバヨコエビAmpithoe lacertosa
あれ?ニッポンって・・・?
Ampithoeは調査でよく得られていますが、種までは落とせていません。
これは米国の研究者によって同定されたものです。


タテソコエビ上科Stenothoidea チビヨコエビ科
チビヨコエビの仲間Amphilochidae sp.
これは私の同定なので、違うかもしれません。
体長1.5mmほどの、大きくて立派なヨコエビです(笑)
触角が短く、透過光で見ると底節板が大きいのがお分かり頂け・・・ないかな・・・。

卒論とは関わりありませんが、新たなヨコエビとの出会いはいい刺激になります。



No.52 10月の盤洲定量調査

月1の調査も今回が最後です。
これまでの結果をまとめて何かを言おうとしたのですが・・・

思わぬNew faceが登場しました。


Urothoe sp.(マルソコエビ科Urothoidae)です。(*1)

この写真で見やすい範囲では、
複眼が大きい、第2触角が長い(背中の方に抜けているのが見えると思います)、
という2点が特徴です。
代表的な潜砂性ヨコエビですが、今回初めて見ました。

その他、これまで同じ方法では採れなかったものが多く混じっていました。
考察が難しくなった感はありますが・・・



No.53 お台場実習
No.54 お台場定期調査


10/29と11/28、奇しくもちょうど1か月の間を空けて、
お台場に行ってきました。
何をするかといえば、ヨコエビ採集に決まってます。

<神無月篇>
10月のフィールドは、こんな環境です。














「船の科学館」の本館が見えます。

南極観測船「宗谷」と青函連絡船「羊蹄丸」が係留されており、桟橋などを利用して調査を行いました。


本来は3年生の実習なのですが、ヨコエビが採れるというので、これを逃す手はないと、指導するふりをして参加しました。




採泥器を使って、海底の泥を採りました。
(写真は去年の実習)

すさまじい硫黄の臭いがしています。

生物らしきものは、ほぼ皆無です。

さすが東京湾湾奥!

・・・しかし、私の狙いはそこではありません。

護岸などの硬い環境に付着している様々な生き物たち。
その隙間こそ、ヨコエビのparadiceなのです。

というわけで、付着生物のカタマリから得られたヨコエビをご紹介します。


タテソコエビ上科Stenothoidea タテソコエビ科Stenothoidae
タテソコエビの仲間 Stenothoidae sp. (*2)

体長2mmちょっとの、大型のヨコエビです(笑)
属まで落とすには解剖しないときついので、科で止めています...

つぶらな瞳が、じつにcuteです。





























透過光で見ると分かるかと思い・・・ましたが、ちょっと難しいですね。
脚を覆うように拡がる「底節板」というパーツがありますが、
第4底節板がとても発達しているのがこの科の特徴です。



<霜月篇>
10月の時点でも色々と採れましたが、本命の”幻のヨコエビ”は不在でした。
この忙しい時期に野外に出るには、それなりの理由があるのです。

11月はまずお台場海浜公園に行きました。
某チタン製の球体が見えますね。
水面下には、カキ礁が形成されています。
表在ベントスの楽園が広がっているはずです・・・
・・・が、MelitaとドロクダとAmpithoeしか出ませんでした。



午後からは「羊蹄丸」船尾の浮桟橋に乗っかり、
付着生物を調べる・・・ふりをしてヨコエビを拾いました。


ドロクダムシ上科Corophipodea ドロノミ科Podoceridae
ドロノミ属の一種 Podocerus sp. (*3)

これも一応ヨコエビです。
※「一応」というのは、厳密な意味での「ヨコエビの仲間」に含めない場合があるからです(Barnard&Karaman,1983)。

細かいことはともかく、この豊富なカラーバリエーションをお楽しみください。





























こいつらは150匹くらい採れましたが、脚と触角がむちゃくちゃ取れやすいので、まともな標本になるのは一部です。

実に残念。







もう一つ残念なのは、本命が1匹しか採れなかったことです。

”幻のヨコエビ”ことTalitroidea sp.です。(*4)
2か月前の調査で出現したようですが、2匹しか採れておらず、もっと標本が欲しいと考えていました。
ハマトビムシ上科であろうとは思いますが、私の力ではもう無理です。
生きている時は、ヒメハマトビムシのように模様がありますが、誤って写真を撮る前に固定してしまったので、パッとしない姿になってしまいました。


これらのサンプル処理が、ようやく終わりました。

来週あたりから、本格的な論文の執筆にとりかかる予定です。
下書き提出に向けて、みんな走り出しています。


参考文献
・Barnard,J.L. and G.S.Karaman (1983) Australia as a major evolutionary centre for Amphipoda (Crustecea),Aust.Mus.Mem. 18:45-61.



(風呂田研・小川洋)


<追記>

(*1)
Urothoe orientalis
和名はまだない。

(*2)
Stenothoe sp.
種までは特定できませんでした。

(*3)
Podocerus brasiliensis
「ブラジル」?
形としては間違いないはずですが、分布がかけ離れています。

(*4)
「幻のヨコエビ」
フサゲモクズかと思っていた写真が、実はこの「幻のヨコエビ」だったようなので、貼っておきます。
Hyale属の仲間なのかな・・・
何やら色が濃いです。

 (追記の追記)
 これは Apohyale 属 の一種と思われます。
 しかも、2枚の写真はそれぞれ別種のようです。
 もう勘弁して・・・

Sunday, November 28, 2010

あの土曜日のひとつの声

どうも不肖ユハラです.
2010年度の写真を整理していたら,3月の船橋界隈の調査候補地視察の記録がありました.
地図を眺めていると,都市の只中にヨシ原があるではないか!ということで前々から視察に行こうと思ってました.海神川,日の出水路などです.

2010年3月20日(土)
潮汐は船橋漁港で午後1時半で最大干潮22cmでした.
午前中都内でのシンポジウムに出席後,急ぎ足で西船橋駅に到着しました.

Hoy es sábado(きょうは土曜日),海神川に到着しました.なかなか良い雰囲気ですが….
Hoy es sábado(きょうは土曜日),海神水門です.
がっつし水門は閉められ,前の写真の景観はすべて淡水でした.
汽水化は潮位の問題もあり難しいそうです.

Hoy es sábado(きょうは土曜日),海神水門を越えた海側の水路です.
もちろん,もちろん,ここは汽水域ですが,干出部分はバクテリアで白くなってます.
いわゆるヘドロで,さすがの私でもベントス調査を積極的に行おうとは思えません.


Hoy es sábado(きょうは土曜日),日の出水門?ががっつし閉ざされてます.


Hoy es sábado(きょうは土曜日),水門を越え国道方面へ.
汽水域ではありません.水門をあけたら潮位で大変なことになりそうです….
しかしなかなか凄い光景です….



Hoy es sábado (きょうは土曜日),もう大神宮下に近い海老川河口の船溜りです.ここは汽水です.
この付近で一期生のK崎くんがクロベンケイガニを捕まえたそうです.
そのクロベンケイガニは「ゴンザレス」という名前で研究室内で大事に飼育されてました.

Hoy es sábado(きょうは土曜日),西船橋から大神宮下まで5kmくらい歩き回りました.
水門を開けば,汽水となり様々なベントス種は増えるでしょうが,高潮の被害が容易に想像できます….なかなか難しい問題です.
元ネタ(本文中の謎の文章は,タンゴオペレッタ「ブエノスアイレスのマリア」から想起してます.)

Friday, November 26, 2010

かにかにどこかに?

どうもユハラです.
今回は,いとやんごとなき理由で,小櫃川河口干潟にて
「ギャラクシガニ」ならぬ「ヒメアシハラガニ」を捜索しなければならないミッションが下されました.
捜索隊を募ったところ,「クロベンケイガニのプリンセサ」と「多毛類界の超新星」の2人の勇者が捜索隊に加わってくれました.


2010年10月22日(金)小櫃川河口干潟

小櫃川河口干潟の入り口の塩性湿地です.いや何かが違う?


これは2003年9月の金田地区です.いや恐竜がいるので白亜紀かも.上の写真も同様です.

これが2010年10月の小櫃川河口干潟入り口の写真です.

若干の時間軸の歪みが生じた今年の「めくるめく10月」でした.
「事実があったがままに」,「事実はこうでなかったのか」,「事実がむしろこうであってくれたら」
byレイナルド・アレナス「めくるめく世界」

捜索隊はクリーク内を数時間歩きました.すると…



何とこれは!全く逃げようともしません!



私は東京湾の干潟に本格的に入って4年目ですが.はじめての確認でした.

とても感動的な出来事でした.

捜索隊の目的である「ギャラクシガニ」ならぬ「ヒメアシハラガニ」は小型個体4個体採集できました.新規加入もあるようです.「不肖ユハラ」が2個体,「プリンセサ」が2個体を採集しました.「超新星」はもちろん「イトメ」を採集してました.

隊員の皆様のおかげで無事にミッションを完了できました.有難うござました.

フォン・シンハマ市にて

どうもユハラです.
前回のブログの最後に書いた,増殖するクロベンケイガニについて.
そういえば,研究室で「クロベンケイのプリンセサ」ことA部さんがいたではないかということで,
早速その調査に,「超新星」を引きつれ新浜湖に同行しました.

2010年9月15日(水)

「プリンセサ」は4カ月以上毎日,このトラップを回収しに「フォン・シンハマ市」に来ていたとのこと.

「これが,若さか…」
「歯食いしばれ! そんな大人,修正してやる!」と私の現場主義もまだまだ未熟であることを思い知られました.

「クロベンケイではありません.通常の3倍のスピードです」

甲幅1cm程度の「通常の3倍(ベンケイガニ)」です.

今まで新浜湖ではほとんど小型個体は見たことが無かったのですが,今年は2個体ほど確認できました.


東京湾で,なぜこれほどまでクロベンケイガニは繁栄できているのか?その謎を解明できれば「こんなに嬉しいことはない」です.

千葉市と市原市の市境をうろうろ

どうもユハラです.
今回は,2010年9月11日(土)での千葉市と市原市にまたぐ小河川に行きました.
生実川と浜野川の現状を確認すべく,「総務課長」,「干潟千里眼U上くん」,「多毛類界の超新星T中くん」を引きつれた,エクスカーションのようなものです.



生実川です.最大干潮に近いはずの時刻なのに….これは一体?



2008年2月の同じような潮位の日の写真です.



確認できたのクロベンケイガニでした.淡水化したのか?



民家の脇を流れる水路にも,クロベンケイガニが一杯!(見えないかもしれませんが…)



こちらは浜野川.これはどうみても淡水ですね…


小河川だけでは,いささか消化不良気味でしたので,玉前緑地に案内しました.皆さん,蜘蛛の子を散らすように干潟に降り立ち思い思いに振る舞います. 巻貝を探す者,オイワケゴカイを探す者.千里眼を使う者.



サンプル瓶のキャップが流されてますよ!



皆さん,お疲れ様でした.

しかし,クロベンケイガニが水がありさえすれば,どこでもいる状態であったことは驚きました.

台風9号接近とKing of the 駄貝

どうもユハラです.
9月10月あたりの野外調査の報告を致します.
しばらくのお付き合いのほど,よろしくお願い申し上げます.

2010年9月8日(水)
台風9号(マーロウ)の接近であいにくの天気でしたが,
午前中はもちそうでしたの現場に行きました.
今回の現場は,富津干潟,新富水路です.
目的は,「King of the 駄貝」と称されるホソウミニナの採集です.
東大のIさんと研究室の総務課長ことF巻くんの同行のもと稲毛を午前8時出発です.



富津干潟に到着です.岬の根元部分でここは立入できます.



Kingの登場です.ツボミを付着させての堂々の登場です.



新富水路です.埋立地と旧海岸線に挟まれた水路です.



ここにもKingはいます.またもやツボミを従えてます.
ただ,このツボミは東京湾では湾口部にしかいない状況です.



新富水路はヨシの前にシオクグが生える環境です.



Kingの採集は2人に任せて,ヨシ原に入りカニ探しです.アカテガニです.



このアシハラガニは何となくカワイイです.



クロベンケイガニが潜んでます.


かなり雲行きが怪しくなってきましたが,私の希望で「小糸川」を視察しました.
汽水域に小規模なヨシ原がある小糸川には前々から行きたかったのですが,今回の機会を使って視察できました.


小糸川です.小規模なヨシ原がみえます.潮がよければもう少し干出しそうです.



もう少し近づいたところです.


アカテガニは確認できました.


この後,午後1時以降,大変な雨量のなか,大学に戻りました.千葉市では1時間に67mmと過去最高の記録で,我が家の近くの国道も冠水していました.

異動

久々の投稿です。鏡味です。 東邦大学理学部の湖沼生態学研究室は2018年3月をもって解散することとなりました。 研究室が始まったのが2007年、53名の学生が卒業しました。研究室は学生や研究員の方々の研究・サポートなしにはありえませんでした。今まで本当にありがとうございま...